一般社団法人日本小児内分泌学会
下垂体・成長障害委員会
成長曲線管理委員会
日本小児内分泌学会では、新しく身長と体重の成長曲線を作成し、平成28年10月より使用することになりました。作成の経緯と特徴について簡単に紹介致します。
平成28年4月から学校での身長・体重の評価に成長曲線が利用されています。教育現場で使用される成長曲線は、2000年度乳幼児身体発育調査・学校保健統計調査のデータ(2000年度データ)から作成されたパーセンタイル表示による曲線です。
このパーセンタイル曲線は、マイナスの値がないため、教育現場では用いやすいものですが、-2.0 SDが2.28パーセンタイル、-2.5SDが0.62パーセンタイル、-3.0SDが0.13パーセンタイルと表現されるように、平均からどれだけ乖離しているかで評価する医療現場では使いにくいものです。
従来から2000年度データを用いた身長・体重のSD表示による曲線(旧SD曲線)が医療現場で広く利用されてきました。この曲線は身長や体重が正規分布していると仮定して平均値とSD値を算出し、それを円滑に結ぶことにより作成されました。しかし、身長は正規分布に近いのですが体重は正規分布していません。
旧SD曲線にこのような問題がありましたので、教育現場で成長曲線が使用されるのに合わせて、今回新しいSD曲線(新SD曲線)が作成されました。新SD曲線はパーセンタイル曲線と同様に2000年度データをもとに作成されています。2000年度データをLMS法で正規分布に近い形に変換した後に(この作業もパーセンタイル曲線と同様です)、平均値とSD値を算出しております。正規分布に近い分布を示す身長は新旧SD曲線ともほぼ同じですが、正規分布を示さない体重は新旧SD曲線の間に明らかに違いが見られます。
新SD曲線は男女別に2歳まで、6歳までおよび18歳までの成長曲線が用意されております。6歳までおよび18歳までの成長曲線には診療に役立てるために,
-2.5SDと-3.0SDの曲線も破線で記入されています。これはLMS法で作成されたものでなく、小児慢性特定疾病の成長ホルモン治療開始基準の身長基準表に合わせて作成しております。従いまして、この2つのSD曲線により成長ホルモンの適応の大まかな判定に使用できますが、最終的に基準を満たすかどうかは上記の身長基準表で判断してください。
日本小児内分泌学会としては新SD曲線の使用を推奨致しますが、身長については旧SD曲線と大きな差はありませんので、当面の間は旧SD曲線を使用されてもかまいません。
新SD曲線はPDFファイルとして会員専用ページからダウンロード出来るようになりますのでご利用ください。会員の一般利用は自由ですが、商業的な利用の場合使用料が発生する場合がありますので、その場合は成長曲線管理委員会にご照会ください。
新SD曲線が多くの方に利用され、診療・研究の一助になることを願っております。