成長ホルモンは、脳の底面にある脳下垂体という場所で作られて血液中に放出(分泌)されるホルモンで、192個のアミノ酸が決まった並び方で鎖のように並んでできている、ペプチドと呼ばれるたんぱく質です。成長ホルモンはたんぱく質ですので、経口投与すると胃で分解されるため効果はありません。現在のところ、注射で投与する以外の投与方法での有効性は認められていません。成長ホルモンは、肝臓に働いてIGF-I(インスリン様成長因子-Ⅰ、別名ソマトメジンC)と呼ばれる成長因子を作らせて血液中に放出させます。成長ホルモンは、同時に骨の成長板にも働いて骨を長軸方向に伸ばすことができます。しかし、ふつう思春期の後半に成長板が完成すると(「骨端線が閉鎖する」とも言います)、成長ホルモンが働いてももう骨は長軸方向には伸びなくなります。
また、成長ホルモンは、一生の間分泌されていて、脂肪組織や筋肉など全身に働いて代謝を調節し、体の組成を正常な割合で維持し、身体機能を正常に維持するとともに、心理的な健康感を持たせる働きをしています。
脳の底面にある脳下垂体という場所で作られて血液中に放出(分泌)されるホルモンで、192個のアミノ酸が決まった並び方で鎖のように並んでできている、ペプチドと呼ばれるたんぱく質です。成長ホルモンはたんぱく質ですので、経口投与すると胃で分解されるため効果はありません。現在のところ、注射で投与する以外の投与方法での有効性は認められていません。成長ホルモンは、肝臓に働いてIGF-I(インスリン様成長因子-Ⅰ、別名ソマトメジンC)と呼ばれる成長因子を作らせて血液中に放出させます。成長ホルモンは、同時に骨の成長板にも働いて骨を長軸方向に伸ばすことができます。しかし、ふつう思春期の後半に成長板が完成すると(「骨端線が閉鎖する」とも言います)、成長ホルモンが働いてももう骨は長軸方向には伸びなくなります。
また、成長ホルモンは、一生の間分泌されていて、脂肪組織や筋肉など全身に働いて代謝を調節し、体の組成を正常な割合で維持し、身体機能を正常に維持するとともに、心理的な健康感を持たせる働きをしています。
子どもの頃に成長ホルモンが足りないと、骨がよく伸びないために背が低くなります。これを、成長ホルモン分泌不全性低身長症と呼びます。この場合には、成長ホルモンを注射で補うことにより、背を伸ばすことができます。ただし、この病気であることを診断し、治療を開始するためには、成長ホルモンが足りないことを2種類以上の成長ホルモン分泌刺激試験という検査で確認することが原則であり、また、骨端線の閉鎖していないことが条件です。
成長ホルモンがほとんど出ない重症型成長ホルモン分泌不全症では、成人後にメタボリックシンドローム類似の身体の異常やQOL(生活の質)の低下を引き起こすことが分かっています。これを成人成長ホルモン分泌不全症と呼びます。この病気を改善するためにも、成長ホルモンの補充が有効です。 一方、成長ホルモンが多すぎる病気は、脳下垂体にある成長ホルモンを作る細胞が増える良性腫瘍(下垂体腺腫)によって起こり、先端巨大症(アクロメガリー)と呼ばれます。この病気では、その名の通り、あご・鼻・手足などが大きくなる以外に、発汗過多、頭痛、視野障害、月経不順、糖尿病、高血圧などをしばしば伴います。成長ホルモンが多すぎると健康を害することが示されています。
ヒトの身体の中で作られるのと全く同じ構造の成長ホルモンが、遺伝子工学の技術により作られ、薬として使われています。他の薬と同様に成長ホルモンも、安全に、そして、有効に使われることが求められます。そのためには、臨床試験(治験)を経て安全性と有効性が確認され、健康保険で承認された対象疾患に対して、薬剤の添付文書にしたがって適正に使用されることが、必要です。
認められていない病気に使用したり、添付文書にしたがわない不適切な使用をしたりすると、効果がないだけでなく、有害なことが起こる心配があります。また、成長ホルモンについて言えば、添付文書に沿った使い方であれば、健康保険が適応されるとともに公費助成を受けられる機会が増します。成長ホルモンの有効性が推測されている病気で、健康保険でまだ承認されていない病気は、少数だけです。小児について言えば、低身長の子どものうち成長ホルモンが適切に使用できるのは、約5%であって、残りの95%ほどは成長ホルモンによる治療は健康保険の適応にならず、また、よい治療効果が期待できません。
成長ホルモンの安全性と有効性が確立していて、保険適応になっているのは、以下の病気です。
小 児 | |
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対象になる病気* | 成長ホルモン投与量(mg/kg/週)** |
成長ホルモン分泌不全性低身長症 | 0.175 |
ターナー症候群 | 0.35 |
慢性腎不全に伴う低身長 | 0.175 →効果不十分の場合0.35 |
軟骨異栄養症(軟骨無形成症・軟骨低形成症) | 0.35 |
プラダー・ウィリー症候群 | 0.245 |
SGA性低身長症 | 0.23 → 効果不十分の場合0.47 |
*対象になるのは、「骨端線が閉鎖していない」これらの病気です。なお、病気の診断と成長ホルモン治療の開始が適切かどうかは、主治医が公益財団法人成長科学協会に適応判定依頼書を提出すると専門的判断の結果が回答される仕組みがあります。
**成長ホルモンの投与量の単位はmg/kg/週です。たとえば、体重24kgの成長ホルモン分泌不全性低身長症の子どもでは、1週あたり、0.175× 24=4.2 mgとなるので、週7回注射では毎日0.6mgを、週6回注射では1日あたり0.7mgを、注射することになります。
成 人 | |
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対象になる病気 | 成長ホルモン投与量 |
成人成長ホルモン分泌不全症(重症型に限る) | 0.003 mg/kg/日で開始して適切な投与量まで徐々に増量。最大1mg/日 |
繰り返しになりますが、承認された対象疾患以外の病気や低身長に使用すると、効果が得られないことが多く、また、有害なことが起こる可能性があります。
骨端線が閉鎖している場合には、成長ホルモン治療は身長を伸ばす効果がありません。また、骨端線が閉鎖に近い状態(日本人TW2法による骨年齢で男子15歳、女子14歳以上)、または、二次性徴が進んでそれとともに1年間の身長の伸びが2cm以下になった場合にも、ほとんど効果がみられません。 成人領域では、成長ホルモンの持つ正の窒素バランスや除脂肪体重の増加、体脂肪量の減少作用から、抗加齢効果や運動能力の向上を期待した誤った使用例が報告されています。成長ホルモン分泌不全のない成人に対する成長ホルモン治療の安全性や有用性に関して、臨床試験による十分な科学的根拠は示されていません。また、悪性腫瘍や心血管障害を発症する懸念も払拭できていません。
投与量が少ないと効果が得られず、多すぎると筋肉痛、手根管症候群、浮腫、血圧上昇、左室肥大、耐糖能障害などの副作用が現れる可能性があり、また、長期の影響についてはよく分かっていません。したがって、認められた投与量の範囲で治療することが非常に大切です。
個人輸入等による成長ホルモンの入手では、専門医以外による場合が多いので、とくに注意が必要です。成長ホルモンの安全な使用には、専門的な知識が望まれます。専門医は、通常日本小児内分泌学会や日本内分泌学会の会員になって学会活動に参加しています。成人成長ホルモン分泌不全症では、成長ホルモン製剤の使用上の注意として、内分泌専門医の指導の下で治療を行うことが明記されています。
個人輸入された成長ホルモン製剤の中には、舌下投与などの投与法が指示されているものがありますが、体内への吸収効率から見て有効性は疑問です。よほど大量を用いれば有効な可能性がありますが、多くの場合、価格から見てもそれは期待できません。注射(圧力式注入器による、いわゆる「針なし注射」を含む)以外の投与法については、現時点では確立した方法がありません。
なお、成長ホルモンを分泌させる薬としてアミノ酸(アルギニンなど)やたんぱく質などを主成分とする内服薬が宣伝されることがありますが、それによる成長の促進は、科学的に証明されていません。国立健康・栄養研究所のホームページの「健康食品の安全性・有効性情報」でも、アルギニン製剤に関して、「発育・成長に関しての文献は見あたらない」「小児にサプリメントとして使用することは推奨できない」と書かれています。また、成長ホルモンを強力に分泌させる効果のある点鼻薬を用いて行われた臨床試験でも、成長率の改善は全く認められませんでした。このことは、成長ホルモンを分泌させるという薬には身長を伸ばす効果がないことを、明らかに示しています。
2011年4月1日
日本小児内分泌学会 理事会
日本内分泌学会 理事会