理事長挨拶

 日本小児内分泌学会は、小児における内分泌学・糖尿病学・代謝学の進歩に貢献し、また、それらの科学的な蓄積を社会に還元することを目的にして、1967年(昭和42年)に設立されました。小児内分泌学は、小児科学と内分泌学の両方の重なりの上に成り立つ特色ある学問です。「内分泌」とは、細胞からごくわずかに分泌される物質(ホルモン)を通して、体のさまざまな働きを調節するしくみのことです。一方、「小児科」は、受精卵に始まって、胎児、乳幼児、学童、そして思春期・青年を対象とする診療科です。このような、人生の初めの20年間は、器官形成、成長、性発達が次々に起こる時期であり、どの段階においても内分泌のしくみが非常に重要な役割を果たしているのです。小児内分泌学は、内分泌学の中の一分野であり、また、小児科学の中の一分野でもありますが、いずれにおいても主要な役割を担っています。

 小児内分泌学が対象とする病気は、成長障害(成長ホルモン分泌不全性低身長症、ターナー症候群など)、甲状腺疾患(先天性甲状腺機能低下症、バセドウ病、橋本病など)、副腎疾患(先天性副腎皮質過形成症など)、性腺疾患(思春期早発症、性分化疾患など)、副甲状腺疾患・骨疾患(副甲状腺機能低下症、くる病、軟骨無形成症など)、水電解質異常(尿崩症など)、小児の糖尿病、さらには、肥満症、メタボリックシンドロームなどです。小児期にみられるこれらの病気は、どれも成長・性発達に大きな影響を及ぼすので、小児内分泌の専門家が主体的に診療に関わることが望まれます。

 日本小児内分泌学会の学会員は、小児内分泌学や小児糖尿病学を専門とする臨床医とそれらの分野の研究者などから成り、現在会員数は1,200名を超えています。私たち小児内分泌学会会員は、子どもたちの成長・発達・代謝に関する研究を推進し、医学的知識・技術の進歩を図りつつ、研究活動の成果を社会に還元していきたいと考えています。そのために学会として、1)小児内分泌疾患・小児糖尿病の発症要因・病態を明らかにし、よりよい治療法の開発を行うこと、2)小児内分泌学・小児糖尿病学を専門とする医師を養成すること、3)診療ガイドラインの作成などを通して、一般小児科医に小児内分泌疾患に関連する必要な情報を提供すること、4)早期発見・早期治療などを目的として、一般市民への広報活動を行うこと、5)国内外の他の学術団体と活発に交流し、情報交換を盛んに行うこと、を活動目標にしています。

日本小児内分泌学会 理事長 横谷 進
((独)国立成育医療研究センター 病院 副院長/生体防御系内科 部長)

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