男女共同参画・ワークライフバランス委員会

ご挨拶

 日本小児内分泌学会は、大好きな小児内分泌学を学びたいという「医友の集まり」です。学びの実現のために必要なピースは多岐に渡りますが、本委員会は、学会における、性別・所属・地域を問わず誰もが学会活動に参加して活躍できる「一隅を照らす人を大切にする」ありかたを大切にしています。多様な「学び」の共有のためのリレーコラム、様々なライフステージにある学会員に向けた学術集会企画セッション、「学び」の実現につながる、内分泌専門医研修受け入れ施設リスト(卒後教育委員会・糖代謝委員会・男女共同参画ワークライフバランス委員会)の公開等を通して、さまざまなキャリアの段階にある学会員の学びの継続の一助となる活動を進めています。ぜひ本委員会の活動について活発なご意見をお寄せください。何卒よろしくお願いいたします。

委員長 藤澤泰子

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リレーコラム

  • Vol.1
    藤澤 泰子(ふじさわ やすこ)
    所属:浜松医科大学小児科 病院准教授

     男女共同参画・ワークライフバランス委員会委員長の藤澤泰子です。この委員会は、性別・所属・地域を問わず誰もが学会活動に参加でき、活躍できる〜一隅を照らす人を大事にする〜仕組みの構築にむけたさまざまな活動を展開しています。このリレーコラムが多様な「学び」の共有につながることを期待します。僭越ながら、トップバッターを務めます。アメリカでの子連れ研究留学について書いてみたいと思います。

     呼吸器内科医の主人が日本で習得したマウス気管上皮の初代培養系をアピールポイントとして複数ラボにアプライし、カリフォルニア大学デービス校(UC Davis)のラボにポスドクとして受け入れが決まったため、2007年4月に渡米しました。この時、長男が2歳。、UC Davisの中のラボにいくつかアプライしましたがポストは得られず、結局1つのラボには見学許可をもらって渡米しました。渡米の前にインターネットでサーチして現地の保育園を確保。長渡米後3日目で現地の保育園(日本人1人のみ)に預けらた長男は、バングラディッシュ人の園長先生に手をつながれて、園の中に入っていくときには、何度もこちらを振り返って「ママ(おむかえに)くる?ママくる?」と確認していました。初日のお弁当はまったく手がついていませんでしたが、あっという間に慣れてくれたのはありがたかったです。

     長男を預けて、ボスと面談して意気揚々とラボに向かったのですが、(本当かどうかはわかりませんが)3.11以降セキュリティーが厳しくなったとのことで、秘書のおばちゃんに、英語で、どうやらラボに入ることはできないというようなことを捲し立てられ、ポカンとしていると「Stay at home!!」と言い放たれました。仕方がないので帰宅し、そこからは、とにかくポスドクとして受け入れてくれるラボを探すことにしました。研究者ビザ(J1)子供ないし伴侶が持つJ2ビザで渡米しましたので、working permissionをもらって就労を可能にすることから開始しました。平行していくつものラボにアプライしたのですが、返事がないかポストがない、の連続。まあ自分の論文数では当たり前なのですが。そんなことをしていると、お友達になった日本人のポスドクの方が、転職するのでポストを引き継がないか、と声をかけて下さいました。ミトコンドリアと酸化ストレスを研究している生化学系のラボです。ただ、彼は、ちょっといいにくいんだけど、と前置きし、「ボス(イタリア国籍の女性)が結構moodyなので、紹介するかどうか迷っていたんだ」と。Moodyだろうがsexyだろうがなんでもいいので、紹介してください、ということでinterviewを受けました。結果、英語のスキルがpoorなこと、と実験の能力が未知数という理由で、「お試し雇用」となりました。1つのアミノ酸を置換してreconstructionしたタンパク(ATPase)の機能を解析したいが、これまでのテクニシャンは何人もうまくいっていない。これを軌道に乗せたら、雇用してあげよう。という話。一度もやったことのない実験(合成ATPaseに基質を入れて吸光度の変化をマイクロプレートリーダーで解析する)を、ひたすらやり続けました。頭のなかで常に流れていた音楽は巨人の星(思いーこんだら、試練のみーちーを〜)。です。ゴリ押しのfigureづくりはありましたが及第点をいただき、雇用してもらいました。小さなラボで、自分とテクニシャンの女性が1人。学生さんが1−2名(medical School志望のため推薦状のためにラボに来ているいうケースが多かったです)。なかなかハードな研究生活で、論文を書くと「あなたの英語をよむと、頭がいたくなって、TYLENOLがてばなせないのよ」と言われ、デスクの横に座らされて何時間もじっくり英語の添削をされる日々でした。ボス(Prof. Ceclilia Giulivi)はとてもキツイ時期で、grant gap(グラントが取れなかった)となってしまい、これは全てYasukoの出来が悪いから、となじられたりもして、凹むこともありました。駐車場からラボまで10分程度歩くのですが、イヤホンで「上を向いて歩こう」を聞きながら、気持ちを上げていく日々でした。

     このころに妊娠がわかり、さらに渡米初期には一度雇用する予算がないため断られていたラボからお誘いのメールがきました。だいぶん悩みましたが、産休を区切りとして同時にラボを移ることにしました。最初のボスとの関係も良好なままで転ラボに成功し、産後3ヶ月から新ラボでポスドクとして働き始めました。ボスはProf. Fumio Matsumura。メールのやり取りは全て英語でしたので、てっきり日系アメリカ人かと思っていたら、東大卒業後にアメリカに渡って学位をとり研究者として大成した毒素学のレジェンドでした。

     2人目を抱っこ紐で括ってインタビューにいったところ、仕事開始は待ってあげられるけど、あなたをdriveするものがあるのならば welcomeです、仲間になりましょう。と。ここでは、AhRというダイオキシンのレセプターでもある核内レセプターがなぜ猛毒ダイオキシンが結合するレセプターが淘汰されずに残っているか、という命題に取り組みました。こじんまりしたラボでしたが雰囲気が良く、高校生のママであるポスドクや、共同機器室で仲良くなったポスドクにはずいぶん助けてもらいました。子供のピックアップがあるので実験を最後まで出来ないときなどは続きを引き受けてくれたり、休日の細胞のメンテナンスをお手伝いしてくれたりなどなど。

     産後の仕事復帰自体は問題なかったのですが、この次男坊が生来の頑固者で、哺乳瓶を一切受け付けなかったのは想定外でした。朝に授乳して保育ママに預けるのですが、夕方のピックアップまでほとんどミルクを飲まずに泣いているらしく(お迎えにいくと大泉門が陥凹していました)、スペイン人の保育ママに、もう無理です。といわれ保育園を首になりました。このがんこbabyを抱っこ紐にいれて、市の保育課みたいな部門を訪問すると、「Oh, I am sorry~. We know!!」と、心配そうに声をかけられ、何か助けてくれるのかと思いきや、保育ママや保育園の電話番号リストが渡され、「電話してみて、Good luck!」さすがアメリカです。拙い英語で順番に電話をして訪問することを繰り返し、アメリカ社会に存在する人種の差や貧富の差、などをリアルに実感しました。結局看護師だったという初老の保育ママが預かってくださることになりました。

     2年の留学の成果は、first author の論文が2本と共著論文が2本。最初のラボでも私の巨人の星千本ノックアッセイデータをもとに途中まで書いていた論文を、first authorにしてくれて出してくれました。経験としては限定的ではありますが、皆さんへ伝えたいことは、変化はチャンス、しなやかさは武器、です。子供は足かせにはなりません(家事と勉強の足でまといにはなりますが)。

     超絶怖かった最初のボスですが、帰国後には共同研究で論文1本、日本での特別講演のあと浜松にも立ち寄ってくれて、子育てと仕事の両立についてアドバイスも。「Yasuko、家にいるときは、laptop立ち上げてはダメよ。こどもの話を聞かなくっちゃ!!」(すいません、できていません。)。あんなに出来損ないを私を雇用してくれたことには感謝しかありません。

     2人目のボスは、10 年前に、ウイルス感染からの間質性肺炎の急性増悪で他界されました。ICUでも論文を書いていたと聞きました。お弟子さんが綴ったボス語録を載せたメモリアルカードをいただきました。「Do you realize how lucky you are for this opportunity ot pursue education, to work in this lab, and to contribute something to science?」。背筋を伸ばさずにはいられません。

     さて、今日もがんばりますか。

    委員会活動の記録

委員会メンバーの紹介

2014年

[卒後教育委員会 女性医師支援部門] 
委員長
長谷川奉延
委員
堀川玲子、村下眞理

2017年

[女性支援・ワークライフバランス委員会]
委員長
伊藤純子
副委員長
位田忍
委員
井原健二、惠谷ゆり、鞁嶋有紀、管野潤子、小山さとみ、長崎啓祐、堀川玲子、間部裕代、村下眞理

2022年

[男女共同参画・ワークライフバランス委員会]
委員長
藤澤泰子
副委員長
難波範行
委員
伊藤純子、宇都宮朱里、鞁嶋有紀、菅野潤子、蜂屋瑠見、水野晴夫、村下眞理、矢ヶ崎英晃

年次活動報告

2015年

  • 専門医取得を希望する女性医師の受け入れ可能な医療機関の調査(評議員対象)
  • 女性医師がライフステージにあった仕事を継続し、専門医取得のための環境整備に関するアンケート調査(会員全員)

2016年

  • 「女性医師のための認定教育施設リスト」 全国42認定教育施設リストをHP会員専用サイトにアップ。会員の年齢、性別、専門医・指導医、学術集会の女性演者・座長の調査開始

2017年
第51回日本小児内分泌学会学術集会

  • Meet the Expert 8 (9月30日 10:35-11:20)
  • 女性キャリアとNutrition-心と身体に栄養を (Nutrition for Body and Heart)
  • 国立成育医療研究所センター 内分泌代謝科 堀川玲子先生
  • ポスター発表
    • 日本小児内分泌学会女性会員の動向調査-アンケートの結果報告(P6-1-19)
    • 日本小児内分泌学会における女性医師の演者・座長登用数の調査 (P6-1-20)

2018年
第52回日本小児内分泌学会学術集会

  • キャリア支援とワークライフバランスを考えるサロン
  • 日本小児内分泌学会女性会員の動向調査について-アンケートの結果報告-
  • 女性支援・ワークライフバランス委員会 村下眞理
  • キャリア支援、子育て支援、ワークライフバランスを考えた職場環境について(スモールグループディスカッション)

2019年
第53回日本小児内分泌学会学術集会 

  • 女性支援・ワークライフバランス委員会特別企画
    • 「女性医師から見た再生医療開発」
      神戸アイセンター病院、理化学研究所生命機能科学研究センター、株式会社ヴィジョンケア髙橋政代 先生  

2021年
第54回日本小児内分泌学会学術集会(WEB)

  • キャリア支援とワークライフバランスを考えるサロン
    • 講演1 「ワークライフバランスとジェンダーフリーを考えた教室運営」
      大分大学医学部 小児科 井原健二 先生
    • 講演2 「小児内分泌科医のキャリア戦略」
      神奈川県立こども医療センター 内分泌代謝科 室谷浩二 先生
    • 講演3 「小児内分泌科医の働き方―私の場合−」
      浜松医科大学附属病院 小児科 藤澤泰子 先生

2022年
第55回日本小児内分泌学会学術集会

  • 委員会企画シンポジウム「働き方改革 その前に―私達はどう働きたいのか?」
    • 座長:難波範行(鳥取大学医学部周産期・小児医学)・藤澤 泰子(浜松医科大学小児科)
    • 「シングルキャリアから高齢出産・育児を経て感じること~「働く」のあり方このままでいいですか~」
      演者:鞁嶋有紀(島根大学医学部小児科学教室)
    • 「大学勤務医と開業医とのキメラな生き方〜ミドルキャリアを使命と人生にどう活かす?〜 
      演者:曽根田瞬(たなか成長クリニック/聖マリアンナ医科大学小児科)
  • 「ブレインストーミングしよう!聴講者参加型 Zoom リアルタイム投票」
  • 特別講演1 (委員会共同開催)
    「多様性を受け入れる社会に向けて:ジェンダードリサーチのススメ」
    演者: 大隅典子 先生(東北大学 副学長(広報・ダイバーシティ担当)・附属図書館長・東北大学大学院医学系研究科発生発達神経科学分野 教授)

日本小児内分泌学会における10年間の活動報告のまとめ

Murashita M, Ito J, Hasegawa T: The first survey about women doctors in the Japanese Society for Pediatric Endocrinology (JSPE). Clinical Pediatric Endocrinology, vol.30 No.3, pp121-126, 202 doi: 10.1297/cpe.30.121 2021

内分泌専門医研修受け入れ施設リスト

 日本小児内分泌学会の約40%は女性会員であり、近年、学会発表の筆頭演者の約40-50%も女性会員が占めています。今後は一人でも多くの女性医師が臨床や研究を継続できるように、専門医・指導医の資格を積極的に取得することが重要です。また、妊娠、出産、介護などのライフステージに応じた復職しやすい環境を整えていくことが急務であり、学会としてサポートしてゆきたいと考えております。そこで、専門医の取得を希望する女性医師が研修施設を探す際に役立てて頂けるように、日本内分泌学会認定教育施設の受け入れ可能な病院とその条件をリストアップしました。子育て中の男性医師にも参考にして頂けますが、この条件は子育て支援のための採用条件ですので、通常の採用に関しましては、各施設にお問い合わせください。

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