先天性副腎過形成症(21水酸化酵素欠損症)について

1. はじめに

副腎は二つの小さな臓器で、腎臓の上に乗るようにしてあります。それぞれの副腎は、二つの部分から構成されます、皮質(外側の層)と髄質(内側の層)です(図1)。

先天性副腎過形成(CAH)はうまれつき(先天性)の疾患で、副腎の皮質から糖質コルチコイドを産生することができないために生じます。
副腎皮質から産生される3種のホルモン、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドや男性ホルモンは、すべて血液中のコレステロールを原料に、いくつかのステップ(化学反応)を経て作られます。CAHはその化学反応を司る酵素やその機能を助ける働きをする分子が先天的に欠損しているために生じる疾患です。その酵素は遺伝子の情報をもとに作られるため、CAHは遺伝性疾患でもあります。

現在、欠損する酵素やその機能を助ける働きをする分子の種類から6疾患が知られています。そのうち95%を占め、最も多いのが21-水酸化酵素欠損症(21OHD)と呼ばれる疾患です。この疾患は日本では約18,000人に一人の頻度で生まれるとされます。本疾患は新生児マススクリーニングの対象疾患となっています。この解説では、この21OHDを中心に説明をします。

21OHDで産生が障害されるのは糖質コルチコイドに加え、鉱質コルチコイドです。またその代償として男性ホルモンが過剰に産生されます(図2)。男性ホルモンは通常、男性の性腺である精巣で大量に産生されますが、副腎皮質も元々は、少量ながら作る能力があります。それが21OHDのような病的な状態になると大量に産生するようになります。

21OHDの病態は、簡単に言えば、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドの不足と、男性ホルモン過剰によって引き起こされる様々な症状と理解することができます。

2. 副腎の働きについて

副腎皮質から産生される2種のホルモン、糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドは生命の維持に必須のホルモンであり、これらのホルモンが正常に働かない場合、最悪の場合には命に関わります。

3. 21OHDの臨床症状と問題点 (図3)

A) 生涯を通じて男女共通して問題となる症状

  • 糖質コルチコイド不足による副腎不全(副腎クリーゼ)

糖質コルチコイドが不足すると、副腎不全(副腎クリーゼ)と呼ばれる状態になります。この状態は、我々医療者が遭遇しうるあらゆる病態の中でも最も恐れられているものの一つです。

B) 小児期に男女共通して問題となる症状

  • 低身長

過剰な男性ホルモンに慢性的にさらされていることが原因です。男性ホルモン、女性ホルモンは、二次性徴を促しますが、これが幼少期から始まるのが21OHDの問題です。骨は成熟が進むと最終的には骨の成長板がなくなり、骨端線が閉じます。こうなると骨は完成し、最終身長を迎えます。

C) 女性で問題となる症状

21OHDで産生過剰となる男性ホルモンは、女性において様々な問題を起こします。

① 新生児期の外性器の男性化

男性ホルモンの作用の一つに、胎内で男性女性の形に区別がない外性器を男性型にする働きがあります。これは性を決める性染色体の型に関係なく男性ホルモンが共通してもつ作用です。胎内で過剰な男性ホルモンが作用すると、外性器は男性化し、一見して男性女性の判別がにわかに困難な非典型的外性器となって生まれてきます。 (図4)。

② 小児期から成人期以降の男性ホルモン過剰による男性化

多毛(男性型の体毛)、低い声、陰核の肥大、皮膚や髪の毛の質感の男性化、などです。男性化の症状が起こると、もとに戻りにくい症状もあるため注意が必要です。

③ 成人期以降の妊娠可能性

21OHDの女性では子宮卵巣は正常に保たれているため、疾患のコントロールが良好であれば、妊娠出産は可能とされています。しかし現実的には妊孕性は一般の女性の方に比べると若干低いという報告が多いです。

D) 成人期以降の男性で問題となる症状

  • 妊孕性

成人期以降の男性では、コントロールが不良となった場合に、精子の形成が障害され、妊孕性が低くなります。

4. 診断

診断は、一般的には、臨床症状および血液や尿検査所見をもとに行います。現在の日本ではほぼ100%の患者さんは新生児マススクリーニングないしは外性器の男性化でみつかり、検査のうえ診断されます。最も重要な血液中のマーカーは17OHPと呼ばれるステロイドです。診断に遺伝子検査は必ずしも必要ありません。

5. 治療

本来副腎皮質で産生される糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドを内服補充することを目的としています (図5)。

① 糖質コルチコイド

薬の作用時間(効き始めてから効果がなくなるまでの時間)の違いにより主に3種類の薬があります。決められた時間に内服するようにしましょう。

  • シックデイの対応とストレス時の内服

身体が必要とする糖質コルチコイドはしばしば体調によって変化する事が知られています。糖質コルチコイドは身体にストレスがかかる程度によって必要量が増加します。ここで言うストレスとは、身体に対するもので、一般に発熱(>38℃)や嘔吐、縫合を必要とするような外傷や外科的処置などを指します。このようなストレスにさらされた状態をシックデイと呼び、速やかにストレス時用に増量した糖質コルチコイドを内服する必要があります(普段の2-4倍量など)。

② 鉱質コルチコイド

フルドロコルチゾンを内服します。身体内の塩分、水分の調節は、多くは鉱質コルチコイドで調節されています。

外性器の外科的な治療

21OHDの女性患者は、胎内で副腎から過剰産生される男性ホルモンの影響で外性器が男性化して生まれてきます。ただ内性器や性腺は女性型のままで卵巣子宮は正常に保たれています。
こうした外性器は、女性として生きていく上で、問題となることが多いため、外科的な治療を行います。多くは、2歳くらいまでに形成術を行います。

6. 予後

予後とは病気の経過についての医学的な見通しのことです。21OHDの予後は、新生児期に発見し、その後速やかに治療を開始すれば原則良好とされています。即ち男性女性ともに普通学級に通い、その後の就職も一般の方と同様にできるとされています。妊孕性は男性女性ともに一般集団の方に比べ低くなる可能性がありますが、治療が良好にされれば保たれることが多いと考えられています。

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