低ホスファターゼ症

概説

低ホスファターゼ症は、生まれつき骨の石灰化が不十分であることが特徴の疾患です。重症度はさまざまで、発症時期や症状から6つの臨床病型(周産期重症型、周産期良性型、乳児型、小児型、 成人型、歯限局型)に分類されています。日本人では重症型が比較的多く、発症頻度は 150,000 人に1人程度と推定されています。その他の頻度は不明で、未診断の方もいらっしゃる可能性があります。

原因

骨の石灰化のために必要な酵素である、組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP)の欠損、あるいは活性低下のため、骨の石灰化が不十分です。TNSALPは神経、筋肉などでも作用しているため、神経や筋肉にも症状が出ることがあります。多くは常染色体潜性遺伝であり、ご両親がお二人とも、2つあるTNSALPの遺伝子のうちの1つに変化がある場合、ご両親はほぼ無症状ですが、25%の確率で低ホスファターゼ症の子どもが生まれます。最近、疾患の認知が進みつつあり、軽症例の歯限局型や成人型などでは、常染色体顕性遺伝(50%の確率で低ホスファターゼ症の子どもが生まれるタイプの遺伝形式)も少なくないことが分かってきました。

症状・診断

骨の石灰化が不十分なため、骨のレントゲンで写りが淡く、曲がった骨、毛羽立った骨の端などがみられます。けいれん、筋力低下、体重増加不良、4歳未満での乳歯脱落などがみられることもあります。重症例は、胎児期に超音波検査で見つかることがありますし、軽症の場合は、成人後に疲労骨折をきっかけとして見つかることもあります。診断は、血清のアルカリホスファターゼ(ALP)が低いこと、症状、および骨のレントゲン写真をあわせて行います。

治療

最近、アルカリホスファターゼの酵素補充療法が保険適用になりました(商品名ストレンジック)。生後早期から治療することにより、重症例の予後は劇的に改善しています。軽症例については、まだ治療の評価が定まっていませんので、今後研究を重ねていく必要があります。

図1.骨の著しい低石灰化と変形を認めます

参考文献

低ホスファターゼ症についてさらに詳細にお知りになりたい方は、「低ホスファターゼ症診療ガイドライン」が公開されていますので、ガイドラインをご参照ください(http://jspe.umin.jp/medical/files/guide20190111.pdf)。

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